世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

2020-01-01から1年間の記事一覧

★ユグノー戦争(1562~98)直前のフランス

◆16世紀フランスの内乱であるユグノー戦争では、サンバルテルミの虐殺(1572)とナントの王令(1598)が,よく知られています。 ◆授業時間の制約もあり、高校の世界史では、なぜ内乱に至ったのか、防ごうとした人はいたのか、どういう国際情勢の中で起きたの…

【米大統領選メモ】最悪のシナリオか

★今回のアメリカ大統領選挙は、ほとんど内戦に近い様相を呈しています。実際の銃撃も続きました。選挙というしくみが、かろうじて内戦を防いでいるのだと思います。 ★最悪のシナリオは2つあると思います。 1 トランプが、いつものようなウソと誇張で勝利す…

★文化をめぐって <唯物史観的なもの、教科書、グローバル・ヒストリー>

☆非力を省みず、大きなテーマを掲げてしまいました。論点も広範囲にわたっています。注は簡潔なほうがいいのですが、長くなってしまいましたので、読みづらいと思います。ただ、舌足らずの内容でも、書いておいたほうがよいと考えました。大きく、次のような…

★「黒人女性副大統領候補」に、サフラジェットやローザ・パークスを思う

◆アメリカ民主党の副大統領候補にカマラ・ハリス上院議員が決まったというニュースがありました。4年前の大統領選挙でヒラリー・クリントンが敗れた時、多くの人から「やはり女性の大統領は無理なのか」という嘆息がもれたようでした。ただ、女性の政界進出…

[コロナ禍のメモ]沖縄、だいじょうぶ?<観光・コロナ・米兵・歴史>(8/11)

◆沖縄の新型コロナウイルス感染者数が、急激に増加しています。 8/10現在の累積感染者数 1184人 ※ほぼ同じ人口の滋賀県は301人 このまま増加が続くと、今月下旬には2000人を超え、9月には3000人に達するでしょう。 ※現在、感染者数が2…

[コロナ禍のメモ]感染急拡大の中、マスメディアはどうなっていくのでしょうか(8/8)

◇新規感染者数(全国) <7月7日> ➡ <8月7日> 211人 1608人 ◇1カ月前と比べて、すごい増加です。政府が経済活動を最優先し、「感染拡大容認」に舵を切ったことは間違いありません。 ◇東京の新規感染者は、きのう、今日と400人台です。沖縄…

★リンダ・コリー「イギリスとイスラーム」の衝撃

◆『〈世界史〉をいかに語るか』(*1)の中で最も衝撃的だったのは、リンダ・コリーの論文「イギリスとイスラーム 1600-1800年」(長谷川貴彦訳)でした。リンダ・コリーの著書『虜囚』を読んだことがありませんでしたので、この論文に記された歴史的事実を…

★<綿のグローバル・ヒストリー>に学ぶ

◆「グローバル・ヒストリーとは?」と考えるものの、グローバル・ヒストリーという語はかなり多義的です。また「グローバル・ヒストリーとは何か」という議論はけっこう混み入っています。混み入った議論を理解するのは大変ですので、私は、広い意味でグロー…

★ノストラダムス -医師・占星術師・改宗ユダヤ人-

◆先日の新聞に五島勉氏が亡くなったことが報じられていました。1973年に出版されてベストセラーとなった『ノストラダムスの大予言』の著者でした。 ◆ノストラダムスは、予言者としては忘れられてもいいでしょう。ただ、混乱の16世紀フランスを生きた人物とし…

▼政府の<感染拡大容認>で<危機の夏>へ(7/22.追記7/24)

◆今日(7/22、水)[18:30現在]の新型コロナウイルス・新規感染者数です。 誰が見ても、第2波になっています。 全国 677人 東京 238人 埼玉 52人 千葉 40人 神奈川 68人 大阪 121人 ◆東京を除いた「Go To トラベル」も、今日から…

▲世界史の中で「戦国」を見ようとしていたものの…(NHKスペシャル)

◆日本中世史研究の呉座勇一が、『女帝 小池百合子』(石井妙子著)の書評の最後で嘆いていました。 「他人の心情に無関心で、利用価値のない人間にとことん冷淡であるように映る彼女の人間性は、確かに恐ろしい。けれども真に恐ろしいのは、彼女の本質に気づ…

★末木文美士『日本思想史』を考える

◆今年1月、末木文美士の『日本思想史』が出版されました(岩波新書)。本ブログは世界史・世界史教育のブログですが、日本で世界史を教える以上、日本を視野に入れない世界史はあり得ないと考えています。その意味では、本書に多くのことを教えられました。…

●コロナの死者数に思う(「メメント・モリ」)

◆東京都の新規感染者数が5日連続で100人を超えたことが、大きく報じられています。このままだと、まもなく150人~200人になっていくのではないでしょうか。また東京都の数字だけが注目されがちですが、神奈川・千葉・埼玉も含めて、首都圏全体の感染者数を…

★名著『薔薇のイコノロジー』の再刊

先ごろ、若桑みどり著『薔薇のイコノロジー』が再刊されました(青土社)。 「そうだよね」という気持ちになりました。「手に入らないのは困ったことだ」と、ずっと思っていたからです。 いつから品切れになっていたのかわかりませんが、初版は1984年でした…

★デカルトの17世紀

◆今年は、デカルトの没後370年にあたっています。 ◆デカルト(1596~1650)に触れない世界史の教科書、倫理の教科書はありません。でも、取り上げ方はかなり難しいです。デカルトの人生と哲学にはいくつかの謎があり、近代ヨーロッパ哲学(*1)の創始者と…

[コロナ禍のメモ]専門家と政府、専門家と私たち

◆2月から新型コロナ対策で活動してきた専門家会議が廃止されるそうです。専門家会議の提言には不思議な点もありましたが(たとえば「やむを得ない生活のし方」をまるで新しい文化のように「新しい生活様式」と名付けたり、マスクと手洗いを推奨しながらうが…

[コロナ禍のメモ]MISIAと“Black Lives Matter”

◆午前10時台でした。車の中で何気なくNHKFMを聞いていたのですが、“ Black Lives Matter ” について女性が熱心に語っていました。「誰だろう?」と思いましたが、火曜日はMISIAの「星空のラジオ」の再放送だったことを思い出しました。 ◆視聴者の声も紹介し…

★フランス革命~ナポレオンの時代を生きた思想家コンスタン

◆先月、政治思想家バンジャマン・コンスタン(1767~1830)の著作が翻訳・出版されました。『近代人の自由と古代人の自由、征服の精神と簒奪、他一篇』(堤林剣・堤林恵訳、岩波文庫)です。 ◆コンスタン(日本では小説『アドルフ』を書いた作家として知られ…

[コロナ禍のメモ]ピュシスとロゴス:生物学者・福岡伸一の危うさ

朝日新聞(2020.4.3付)の福岡伸一の文章については、すでに3月23日付のブログの【追記(4.3)】で書きました。 4月の文章に、福岡は驚くべきことを書いていました。 ・「ときにウイルスが病気や死をもたらすことですら、利他的な行為といえるかもしれない…

[コロナ禍のメモ]中国のコロナ対策国際支援(バルカンへも)

★情報はあふれ、更新され、いつか忘れられていくということを、この半年間の新型コロナウイルス感染症のニュースを見ながら、あらためて思っています。 ★たとえば、あれだけ「安倍政権による緊急事態宣言」に反対していた朝日新聞は、「感染のピークは緊急事…

★中国の<1989.6.4>が歴史の中で生かされる時

◆今日は、1989年の(第二次)天安門事件から31年目にあたります。中国では、<天安門事件>という語はおろか、<1989>や<6.4>という数字さえネット上から削除されるという恐ろしい体制が続いています。 ◆すでに1986年頃から、胡耀邦党総書記やそのブレー…

★<印象派>(授業で多角的に考えるために⑦)

★通常の高校世界史では、美術史にはごく簡単にしか触れません。ルネサンス美術でさえ、10分程度で終わる教員もいると思います。しかし、美術史は汲めども尽きぬ泉のようなもので、さまざまな授業展開が可能です。 ★印象派の絵画は、日本でもとても人気があり…

[コロナ禍のメモ]<人間>を忘れないで(「新しい生活様式」)

2020年5月4日、政府の専門家会議は、新型コロナウイルスの感染拡大を長期的に防ぐために「新しい生活様式」を提示しました。テレワークやオンライン会議、ローテーション勤務などは、「コロナ後」も続いていくものかも知れません。 外出時のマスク着用、人…

ゆげひろのぶ「ペスト後に自由」(朝日新聞)は本当?

★東大入試問題をもとにした解説で(朝日新聞4月15日付、5月5日付別刷に再掲)、ゆげひろのぶはペストに関して次の3つのポイントをあげていました。 ①交易によりペストが流行した。 ②ペスト流行により、ルネサンスに至った。 ③ペスト流行により、資本主義…

新型コロナ・データ:嗚呼、日本のPCR検査数(OECD調査)

★OECD(経済協力開発機構)が、加盟国のPCR検査数を発表しました(2020年4月28日)。「先進国」日本の検査数は、恐ろしいほどの少なさです。35か国中下から2番目でした。厚生労働省や国立感染症研究所は、今まで何をしてきたのでしょうか? ★人口1,000人あ…

【資料とコメント】ルネサンスと宗教改革 (+α) を多角的に(その3)[イコノクラスム、ミケランジェロ、ユダヤ人追放]

★このテーマの趣旨については(その1)で述べてあります。恣意的な資料の選択に見えると思いますが、問題意識の所在はわかっていただけるでしょう。読み物として読んでいただいても楽しめると思います。 資料9[宗教改革期のイコノクラスム(聖像破壊運動…

【資料とコメント】ルネサンスと宗教改革 (+α) を多角的に(その2)[ネーデルラント絵画、フランソワ1世、首長法、新しい敬虔]

★このテーマの趣旨については(その1)で述べてあります。恣意的な資料の選択に見えると思いますが、問題意識の所在はわかっていただけるでしょう。読み物として読んでいただいても楽しめると思います。 資料5[イタリアが受けた衝撃(ネーデルラント絵画…

【資料とコメント】ルネサンスと宗教改革 (+α) を多角的に(その1)[概観、ルター、コペルニクス]

★ルネサンスから宗教改革・対抗宗教改革・宗教戦争の時期に、長い間強い関心を持ってきました。10世紀から11世紀の頃、西・中央ヨーロッパの原型が出来上がったとすると(数百年かかりました)、14世紀から17世紀にかけては、第二の(近現代西・中央ヨーロッ…

<新型コロナ・データ(4/24)>この1カ月の感染者・死者増加[付 世界では]

【日本の新型コロナ感染者数・死者数(クルーズ船は含まず)】 *日本の人口 1億2,650万人(2019) ◆1カ月前(3/24) 感染者 1,198人 死者 59人 *この日に、東京オリンピック・パラリンピックの延期が発表されました。 *約1カ月前(2/2…

【資料】E.H.カーの教え

★E.H.カーの『歴史とは何か』を初めて読んだのは、大学1年の時でした。通読するのに苦労した記憶があります。それ以来、時折ページを繰ってきました。原著は1961年出版で、講演を書籍化したものです。翌年に日本語訳が出たというのは、すごいことだと思…