先ごろ、若桑みどり著『薔薇のイコノロジー』が再刊されました(青土社)。
「そうだよね」という気持ちになりました。「手に入らないのは困ったことだ」と、ずっと思っていたからです。
いつから品切れになっていたのかわかりませんが、初版は1984年でした。
目次の一部を紹介します。
Ⅰ 薔薇の聖母
Ⅱ 薔薇を喰べた驢馬
Ⅲ レオナルドの庭園
Ⅳ 薔薇園にて
Ⅴ 美しき女庭師
……
終章 生きている花
若桑みどりさんは、「あとがき」で次のように書いていました。
「なぜ私がこの本を書いたか。まず第一に、それは芸術史研究を限定してきたもろもろの境界線を取りはずしたかったからである。(中略)私は一つのイメージが個人を超え、時代を超え、洋の東西を超えて、いわば普遍的な象徴となって人類に共有されているのを知った。これを予感したとき、私はあえて境界をはずすという危険を冒そうと心に決めたのである。」
私は、美術史が思想史でもあること、それだけでなく庭園の歴史や花の栽培の歴史がそのまま人類の精神史であることを、この本から教えてもらったと思っています。
今は亡き若桑みどりさんも、再刊の知らせを聞いて、天国で(カトリックの方だったと思います)微笑んでおられることと思います。