世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「慰安婦」の記述(「日本史探究」の教科書では)

 

◆「慰安婦」は、新科目「日本史探究」[*]の教科書では、どのように記述されているのでしょうか。5冊の教科書を調べてみました。

 

[*]高校2~3年生の選択科目で、昨年度から履修が始まりました。1年生で必修の「歴史総合」を学んだ後、「世界史探究」・「日本史探究」・「地理探究」から1科目選びますが、「日本史探究」を選択する生徒が一番多いと思います。

 

 

【『詳説日本史』(山川出版社)では】

 

<中国人の強制連行を述べた本文の注で記述>

 『戦地に設置された日本軍向けの「慰安施設」には、日本・朝鮮・中国などから女性が集められ、「慰安婦」として働かされた。強制されたり、だまされて連行されたりした例もある。』

 

【『日本史探究』(東京書籍)では】

 

<朝鮮や台湾からの動員、中国からの連行を述べた本文の注で記述>

 「占領地や植民地の女性のなかには、慰安婦として戦地に送られた者も少なくなかった。」

 

※東京書籍版は、唯一「慰安婦」という語を索引にも載せています。

 

【『高等学校日本史探究』(第一学習社)では】

 

<本文の記述>

 「朝鮮人を中心とした多くの女性が慰安婦として戦地に送られた。」

 

【『日本史探究』(実教出版)では】

 

<本文の記述>

 『中国戦線での見聞をもとにした石川達三の「生きてゐる兵隊」は、慰安所での兵隊の描写などを伏せ字としていたが、反軍的であるとして発禁処分を受けた。』

 

慰安所の注で記述>

 「日本軍の関与のもとで設置・統制され、戦域の拡大とともに広がった。日本人のほか植民地・占領地の女性が慰安婦として将兵の性の相手を強いられた。」

 

【『高等学校日本史探究』(清水書院)では】

 

 本文にも注にも、なぜか記述はありません。

 

 

◆「慰安婦」といっても、高校生にはわからないと思いますので、実教出版の注のような記述が必要だと思います。

 

◆来年は(少し気が早いですが)、戦後80年という年にあたります。「(アジア)太平洋戦争」について、あるいは「十五年戦争」について、もう一度深く考えなければならないと思っています。「慰安婦」の問題は、ジェンダーの観点からも(「戦時性暴力」という観点からも)、避けて通ることはできません。