世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「世界史探究」教科書の検討2[新約聖書の言語②](東書・実教では)

 

◆「検討1」で『新約聖書』の言語に関することをやや詳しく述べましたので、今回は簡潔な指摘にとどめたいと思います。

 

◆取り上げる教科書は、東京書籍の『世界史探究』と実教出版の『世界史探究』です。

 

◆どちらの教科書も、残念なことに、ヒエロニムスがギリシア語からラテン語に翻訳したことについては、まったく触れていません。

 

◆実教の教科書は、中世ヨーロッパを記述する際に「ラテン=カトリック圏」という、高校世界史としては新しい用語を使用したのですから、ヒエロニムスのラテン語訳に触れないということは理解できません。なお、「ラテン=カトリック圏」という用語の使用は適切です。他社の教科書にも波及してほしいものです。

 

◆『新約聖書』がギリシア語(コイネー)で書かれたことについては、東書は注で触れていますが、本文に記すべきだと思います。同じく注で「今日の形の『新約聖書』が成立したのは4世紀末のことであり」と述べている点は、たいへんすぐれています。

 

◆言語は(翻訳を含めて)文化そのものなのですが、実教は、『新約聖書』がギリシア語(コイネー)で書かれたことには、触れていません。もっと言語に注意をはらって、初期キリスト教について記述してほしいものです。『クルアーン』がアラビア語で書かれたことは明記しているのですから。