世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「世界史探究」教科書の検討17[ハワイ王国最後の王リリウオカラニ]

 

アメリカ合衆国によるハワイ併合(1898)は、「列強によるオセアニア支配」の最終段階に当たる、重要な出来事でした。リリウオカラニ女王は、ハワイ王国最後の王となってしまいました(在位1891~93)。各社の教科書ではどのように取り上げているでしょうか、比較してみます。

 

東京書籍の『世界史探究』は、本文で次のように述べています。

 

 「ハワイ王国立憲君主政をとって近代化をすすめたが、アメリカ軍の介入により王政が倒され、その後、1898年にアメリカに併合された。」

 

★また、リリウオカラニ女王の写真を載せ、『「アロハ・オエ」の作曲者としても知られる。』と記しています。

 

★さらに東書は、「ハワイ王国と日本」という短いコラムで、1881年、当時のハワイ国王が来日して明治天皇と会見し、日本からの移民を要請したと述べています。[*1]

 

◆一方、実教出版の『世界史探究』の場合は、本文は簡単な記述ですが、リリウオカラニ女王の写真[*2]の解説でやや詳しく述べています。

 

 『(リリウオカラニは)1891年に即位すると、制糖業を背景に強まった白人の影響力を排除しようとしたが、1893年、白人のクーデタによって退位させられた。代表的なハワイ民謡「アロハ・オエ」の作詞・作曲者でもある。』[*3]

 

山川出版社の『詳説世界史』の場合は、本文では簡単に併合に触れ、リリウオカラニの写真の解説で次のように述べています。

 

 「ハワイ王国1840年来、立憲王政であったが、93年アメリカ合衆国の圧力でリリウオカラニ女王は退位させられ、98年に併合された。」

 

山川出版社の『新世界史』は、アメリカによるハワイ併合にごく簡単に触れているだけです。リリウオカラニは取り上げていません。

 

帝国書院の『新詳世界史探究』は、驚くべきことに、アメリカによるハワイ併合についても、リリウオカラニについても、触れていません。

 

[*1]「世界史探究」では、このような視点も大切だと思います。日本からハワイへの移民の本格的な開始は1885年でした。ただ、興味深いことですが、最初のハワイへの移民は1868年でした。

 

[*2]東書と同じ写真ですが、東書はモノクロで実教はカラーですので、もとは肖像画のようです。

 

[*3]リリウオカラニは『「アロハ・オエ」の作曲者』と紹介されることが多いのですが、実教の記述のほうが正確です。