世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「世界史探究」教科書の検討16[後期印象派?]

 

◆美術史家の高階秀爾さんも10年ぐらい前に述べておられましたが、美術史ではゴッホゴーギャンセザンヌを、後期印象派ではなくポスト印象派と呼ぶようになっています。この3人の画家を「印象派の影響を受けているけれども、それぞれ独自の画境に進んでいったので印象派には含めない」という考え方です。むしろ、フォーヴィスムキュビスムなどへの影響のほうを重視するようになったのだと思います。

 

◆しかし、「世界史探究」の教科書5冊(山川出版社の『詳説世界史』・『新世界史』、東京書籍の『世界史探究』、実教出版の『世界史探究』、帝国書院の『新詳世界史探究』)のうち、ポスト印象派という用語を使っているのは帝国の『新詳世界史探究』だけでした。

 

◆「歴史総合」の各教科書でも同じだったのですが、残念なことに、美術史の新たな見方が取り入れられていないのでした。「政治史・経済史・国際関係史が中心で文化史は二の次」という暗黙の前提が、まだ歴史研究者の間に残っているのでしょう。

 

◆また文化史も、男性中心史観から抜け出せていないと思われます。<文化史+ジェンダー史>という視点で世界史の教科書を刷新するところまでいくには、これから何年もかかるのでしょう。ピアニストであり作曲家でもあったクララ・シューマンやメキシコの画家フリーダ・カーロなどを取り上げれば、世界史はもっと豊かになると思うのですが……。

 

◆ポスト印象派にもどりますが、帝国の『新詳世界史探究』は目配りが効いていました。他の教科書は、改訂の際に改めてほしいものです。