世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「世界史探究」教科書の検討18[「琉球処分」は注で述べればいい?]

 

★今回はいわゆる「琉球処分」(明治政府による沖縄県設置)について考えてみます。

 

山川出版社の2冊の「世界史探究」教科書(『詳説世界史』と『新世界史』)は、いずれも「琉球処分」については本文でごく簡単に触れ、注で補足しています。多分「世界史の教科書なのだから(日本史の教科書ではないのだから)注で述べれば十分」という考え方なのだと思います。山川の「世界史探究」のこのような姿勢は、はたして妥当でしょうか?

 

東京書籍の『世界史探究』実教出版の『世界史探究』帝国書院の『新詳世界史探究』は、「琉球処分」を本文で記述しています。

 

◆以下は、東京書籍『世界史探究』の本文の記述です。

 

 「日本は、1871年に平等条約である日清修好条規を締結し、さらに日清両属の地位にあり、フランスやアメリカ合衆国と条約を締結していた琉球王国琉球藩とし、その後、清との冊封朝貢関係を断絶させた。1874年の台湾出兵は日清両国間での戦争の危機をまねいたが、79年に日本は沖縄県を設置して国土編入を強行した。」[*]

 

[*]台湾出兵については、注に記しています。

 

◆「琉球処分」は19世紀後半の東アジア史における、きわめて重要な出来事でした。東書のような記述が適切だと思われます。

 

◆なお、帝国書院『新詳世界史探究』は一歩踏み込み、注で「琉球側の抵抗を押し切って」と述べていました。また、小笠原諸島の領有についても本文で記していて、すばらしいと思います。

 

▼たいへん残念なことですが、山川の2冊の「世界史探究」は、「琉球(沖縄)を19世紀後半の東アジア史に位置づける」という視点が希薄な教科書になってしまいました。「世界史探究」を選択し山川の教科書で学ぶ生徒たちは、「琉球処分」を軽く見てしまうのではないでしょうか。