世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★トルキスタンの成立

 

◆トルコ系民族の西方移動(西進)や東西トルキスタンの成立は、生徒たちにとっては理解しづらい部分だと思います。したがって高校の世界史の教科書も、ある程度ていねいな記述が必要だと思ってきました。

 

◆ていねいな記述がなされているのは、東京書籍の『世界史探究』と帝国書院の『新詳世界史探究』です。

 

◆東書は、「草原地帯のトルコ化とイスラーム化」というタイトルで、2ページにわたって記述しています。「トルコ人の西進」の地図と中央アジアの地勢・オアシス都市がわかる地図も載せています。東トルキスタン西トルキスタンの区別は、本文と地図で理解できるようになっていて、親切です。なお、ハザール(7~10世紀)について触れていて、すばらしいと思いました。

 

◆帝国では、「突厥帝国とウイグルチベット」および「トルコ人の西方移動とユーラシアの変動」で、詳しく述べられています。「トルコ系王朝の西方展開」という地図も載せていますが、特に次の記述が光っています。

 

 「このように9世紀に始まるトルコ人の西方移動は、数世紀をかけて、西へ向かうトルコ化(住民の言語のトルコ語化)と東へ向かうイスラーム化(住民のイスラーム受容)の波を引き起こし、世界史に大きな影響を与えた。」

 

山川出版社の旧課程版の『詳説世界史』にはていねいな記述とわかりやすい地図があり、大変良かったのですが、なぜか新課程の「探究」では簡略化されてしまいました。東トルキスタン西トルキスタンの区別も記されていません。中央ユーラシア史の記述の後退は好ましいことではありません。

 

▼山川の『新世界史』の記述も簡単なものです。しかも一連の流れが2か所に分けて書かれていますので、生徒たちはわかりにくいと思います。

 

実教出版の『世界史探究』もきわめて簡単な記述です。しかも、ウイグルトルキスタンも中国史に付随して書かれています(まるで半世紀前の教科書のようです)。このような取り上げ方では、生徒たちは、中央ユーラシアの歴史を軽視してしまうでしょう。