世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

●コロナの死者数に思う(「メメント・モリ」)

 

◆東京都の新規感染者数が5日連続で100人を超えたことが、大きく報じられています。このままだと、まもなく150人~200人になっていくのではないでしょうか。また東京都の数字だけが注目されがちですが、神奈川・千葉・埼玉も含めて、首都圏全体の感染者数を見たほうがいいと思います。

 

◆現在の全国の感染者数・死者数を、2カ月半前の数字と比べてみます(クルーズ船は除いています)。なお、緊急事態宣言が全国に拡大されたのは、4月16日でした。

            <4月20日>      <7月6日>

   感染者数     1万1151人      2万61人

   死者数         263人       978人

  *感染者数は1.8倍に、死者数は3.7倍になっています。

 

◆死者数を、いくつかの都道府県と首都圏で見てみます。

            <4月20日>      <7月6日>

   東京都        77人        325人

   大阪府        13人         86人

   神奈川県       19人         96人

   北海道        21人        101人

  [ 首都圏       120人        532人 ] 

   *7月6日現在、全国の死者数の54%を首都圏が占めていることになります。

 

◆「PCR検査を充実させれば感染者数は増えていくので問題はない」とは言えないでしょう。感染が拡大すれば、重症者も死者も増えていくはずです。諸外国と比べれば格段に少ないですし、最近の増加はゆるやかですが、死者数の増加をどう考えればいいのでしょうか?

 

◆九州の豪雨は大変な被害をもたらしています。(言葉がありません。2週間後に感染拡大が起きないよう祈るばかりです。)豪雨被害では死者数は大きく報道されます。新型コロナウイルスによる死者数は、今はあまり注目されていません。しかし、静かに増えていって、今月中には1000人を超えるでしょう。数字だけ見ていると感覚が麻痺してしまいますが、1000人の人が亡くなれば、その1000人に関わった万単位の人たちの悲しみがあるはずです。

 

◆緊急事態宣言を出した頃の緊迫感は、政府にも「分科会」にもないようです。経済活動を重視しているからでしょう。また、今のところ重症者が急増していないからでしょう。しかし、全国で感染者は毎日200人ぐらい増加していますので、入院者数も当然増加していきます。重症者も再び増加していくでしょう。つい2か月ほど前には、あれほど「医療崩壊」が心配されました。今のところ病床数には余裕があるようですが、医療現場の大変さを考えると、楽観はできません。後で「あの時手を打っていれば」などと言うことがないように、政府は、休業要請も含め、しっかりした対策を立ててほしいと思います。

 

◆一方アメリカでは、この1カ月間で1万9千人以上の人が亡くなり、死者の合計は13万人近くになっています。驚くべき数字です。このような状況の中で、大統領は強欲にも再選を狙っています。「死」に対する感覚は鈍ってしまったのでしょうか?

 

◆中世ヨーロッパでは、14世紀半ばのペスト大流行から15世紀にかけて、「メメント・モリ(死を思え)」と言われました。ただ「メメント・モリ」は、諦念や無常観ではありませんでした。多分、強く「死を思う」気持ちが、現世での生のエネルギーに転化したのです。光と闇が交錯するような混沌とした状況ではありましたが、その強い思いの中から、ヨーロッパの近世が始まっていきました。

 

◆「ウィズ・コロナ」とは、単に経済活動を再開し、娯楽を解禁することではないはずです。ましてや、感染者・死者の増加を容認することではないはずです。感染拡大の渦中だからこそ、「メメント・モリ(死を思え)」のような、なんらかの強い思い、強い意志を持つことが大切なのではないか、と思ったりしています。