世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

【2回目の緊急事態宣言】政府の対策遅れで危機に、一方で国民には罰則が 

※データは、1/16(土)の分まで更新します。

 

▼1月8日からの1都3県の緊急事態宣言は、1週間も経たないうちに(13日から)11都府県に拡大しました。やはり、政府の見通しが甘かったのです。11都府県以外にも急速に拡大し、緊急事態に準じる措置をとっている県・市が複数ある状態です。

 

▼約1カ月前と比べると、爆発的感染拡大と言っていい状態です。

 

                  新規感染者数       死者数

  ●12/ 6(日)~12(土) 17,325人    244人

     1/ 3(日)~ 9(土) 40,627人    450人

         [※1/8(金)  7,882人【過去最高】]

     1/10(日)~16(土) 42,133人    454人

 

                     重症者数

  ●12/ 6(日)         519人

     1/ 3(日)         714人

     1/16(土)         965人

 

  ▼この1週間、1日平均6,000人が新規感染しています。重症者も急速に増加してしまいました。病床が足りなくなるのは当然です。少なくとも来週半ばまでは、この状況が続くと思います。東京都をはじめとした首都圏は持ちこたえられるでしょうか? 非常に心配です。また、大阪府の死者数は東京都を上回っています。

 

▼12月に緊急事態宣言を出していれば、これほどまでにはならなかったでしょう。しかし、緊急事態宣言どころか、政府に危機感は欠けていました。「5人以上の会食は控えましょう」という政府の呼びかけに反して、首相みずから大人数で豪華な会食をしたのは12月半ばでした。国民の政府への信頼感は、大きく揺らぎました。また、「Go To~」という語も、「ウィズ・コロナ」という語も、ウイルスへの警戒心をゆるめてしまったのです。

 

▼分科会の責任も重大です。ほとんど無力でした。感染拡大を防ぐための組織だと思っていましたが、感染拡大を追認するだけの組織になってしまいました。諮問委員会、有識者会議、厚生労働省の専門家会議などとの関係も、よくわかりません。さらに対策会議もあります。会議だけ並べていても、有効な対策をとれないのではどうしようもありません。

 

▼緊急事態宣言発出から2週間となる来週末には、少し落ち着くでしょうか? もし落ち着かなければ、日本全体が危機的な状態に入っていくでしょう。

 

                 累計の感染者数     死者数

  ● 1/16(土)現在    324,936人   4,476人

 

 ▼入院したくても自宅で療養せざるをえない人たちが、1/13(水)現在、3万人以上いるとのことです。来週にかけて、さらに増えていくでしょう。入院先がなく、自宅や高齢者施設で療養している人が、何の治療も受けられずに亡くなっていくという事態が起きています。もはや医療崩壊と言っていいと思います。なぜ、第1波が収束した後、冬に備えて医療体制の充実に取り組まなかったのでしょうか?

 

▼このような状況の中、法律の「改正」で、罰則や病院名公表が検討されています。

 

 <1>罰則

 ① 入院拒否の場合:1年以下の懲役か100万円以下の罰金

 ② 保健所の行動履歴調査などを拒否した場合

            :6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金

 ③ 営業時間短縮などに従わない場合:30万円・50万円

 

 <2>新型コロナの患者受け入れの勧告に応じない病院の場合

    :病院名を公表

 

★諸外国の例もあるようですが、できれば日本はこのようなことをせずに乗り切ってほしいと思います。<1>の場合も<2>の場合も、やむにやまれぬ理由があるかも知れないのです。「6カ月以下の懲役」「1年以下の懲役」などという発想はどこから出てくるのでしょうか? 政府はみずからの対策の失敗は省みず、「恐怖のコロナ対策」で乗り切ろうとしているように見えます。

 

★<1>の①②について、日本医学会連合(医学系136学会が加盟)は1月14日、罰則反対の緊急声明を発表しました。その中で、次のように述べています。

 「抑止対策をせずに感染者個人に責任を負わせることは、倫理的に受け入れがたい。」

 

★対策の遅れだけではありません。政府は、方針転換しても、きちんと説明しません。前の方針の継続であるかのように言いつくろっています。国会や記者会見で質問を受けても、常套句を並べてうまくかわすことが政治だと思っているようです。言い逃れが当たり前となり、誰も責任をとりません。国民の心に響くメッセージもありません(ドイツやニュージーランドの首相を見習ってほしいものです)。政府と国民の間には、信頼関係があまりない状態です。政府は国民に罰則をもって臨もうとしていますが、信頼関係はますます損なわれるでしょう。

 

★政治とは何か、政治家はどうすべきなのか、あらためて考えさせられています。「経世済民」という語を思い出しました。「世を治め、民の苦しみを救う」という意味です。古いことばですが、政府は、よく噛み締めてほしいと思います。