世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

【コロナ感染危機・緊急事態宣言】時すでに遅し、分科会も機能せず(1/5、追記1/6)

 

菅内閣はようやく「緊急事態宣言」を出すようです。1都3県を対象に、1月8日午前0時から実施する方向だそうです。多分、「時すでに遅し」です。分科会も、残念ながら、機能しませんでした(*)。今まで述べてきたように、政府も分科会も「座して、感染爆発➡医療崩壊を待つ」ような対応に終始してきたのです。 

 

◆今回の場合、「緊急事態宣言」とは言っても、「限定的な緊急事態宣言」のようです。飲食店の営業制限が中心になると伝えられていますが、はたして飲食店だけが感染拡大の「元凶」なのでしょうか? 1都3県だけの地域限定で大丈夫なのでしょうか?

 

◆1月4日の記者会見で、菅首相は次のように述べていました。

 「昨年来、対策に取り組む中で判明したことは、経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘しております。したがって飲食でのリスクを抑えることが重要です。そのため、夜の会食を控え、飲食店の時間短縮に御協力いただくことが最も有効ということであります。」

 [総理官邸ホームページより]

 

◆8人で豪華な会食をしたこと(20日前のことでした)を反省した上での言葉なのでしょうが、やはり白々しく聞こえてしまいます。リスクがあるのに、なぜ「GoTo イート」を推進したのか、説明はありませんでした。

 

菅首相・二階幹事長の会食だけでなく、驚くべきことに、自民党の複数の派閥で忘年会が企画されていました。「マスク会食」などということも言っていました。「食べる時にマスクを外し、すぐまたマスクをつける」厚労大臣の映像がテレビに流れていました。呆れてしまったのを覚えています。政府・自民党は、「飲食でのリスク」など、本気で考えてはいなかったのです。

 

◆「国民の協力が得られなかった」というニュアンスの発言が、政府や専門家から聞かれますが、とんでもないことだと思います。「Go To~」や「ウィズ・コロナ」などという言葉は、国民の警戒心を弱める、きわめて安直なメッセージでした。11月後半~12月初めの時点で、政府・自民党・分科会にもっと危機感があれば、そして心に響く真摯なメッセージがあれば、国民の行動は変わっていたでしょう。 

 

◆飲食店での大人数の会食を控えるのは当然ですが、飲食店等の営業時間短縮を重点にすることで感染拡大を抑えられるとは思われません。病院や高齢者施設でのクラスター発生を見れば、飛沫感染の実態をもっと広く深刻に考えるべきだと思います。呼吸という、人間という生き物の根幹の部分に沿って身体に入り込むウイルスなのです。多分、「マスク、手洗い」だけでは防げないほど感染力が強いのでしょう。マスクが100%ウイルスを遮断するわけではないことを、思い出す必要があります(以前から書いていますが、「うがい」が推奨されないのは不思議でなりません)。

 

 ◆今進行しているのは、危機的な感染拡大です。医療崩壊はもう目前です。今後、感染拡大を抑え切れずに、「宣言」の範囲やなかみを小出しに重ねていくような愚は避けてほしいと思います。言論弾圧情報隠蔽は論外ですが、武漢の事例に学ぶべきことはあるはずです。3~4週間ぐらい、全国的に(あるいは数地域に限って)、人の移動を徹底して減少させる、ロックダウンに近い対策が必要ではないでしょうか。そのほうが、経済活動の回復にもつながるはずです。

 

◆感染状況は、これからどうなっていくのでしょうか? 素人の予測に過ぎませんが、12月からの状況を考えると、よい方向に向かうとは思われません。新型コロナウイルスは、残酷なまでに強力です。「緊急事態宣言」を検討している間(4日~7日)にも、新規感染者、重症者、死者は増えていくでしょう。「緊急事態宣言」発出以降も、しばらく感染拡大の勢いは止まらないと思います。政府内にも衝撃が走るほどの数字になるかも知れません。その時はじめて「時すでに遅し」だったことを知るのです、きっと。

 

(*)5日、分科会の尾身会長は、緊急提言を発表しました。次のような発言がありました。

  ① 「首都圏の現状は爆発的感染拡大に相当する」

  ② 「緊急事態宣言を発出すべき」

  ③ 「緊急事態宣言で感染が下火になる保証はない」

 ①・③についてですが、よく考えると、疑問が湧いてきます。

 分科会は「爆発的感染拡大」を追認するための組織なのでしょうか? 「爆発的感染拡大」を防ぐために設けられたのではなかったでしょうか? 本当に残念なことですが、分科会にも危機感は欠けていました。「私たち専門家の力が足りず、爆発的感染拡大を防げませんでした」と言ってほしかったと思います。特に③は、分科会としての責任を放棄したような発言です。

 ②を、11月下旬(「勝負の3週間」という発言があった時期です)か、遅くとも12月初めに提言すべきでした。そうすれば、少なくとも③のようなことを言わずに済んだと思います。

 【2021/1/6 追記】