世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

▼暴動を煽ったトランプ、合衆国の歴史に汚点(2021/1/6)【追記1/8,1/9】

 

▼日本で新型コロナウイルス感染が爆発的に拡大して不安が広がっている時、アメリカで前代未聞の大変な事態が起きました。大集会を開いていたトランプ支持者たちが、「議事堂に向かえ」というトランプの言葉に応えて、連邦議会議事堂に乱入し、一時占拠したのです。死者も出てしまいました。議会では、大統領選挙の結果の確認が行われている最中でした。警備体制の不十分さも露わとなりました。

 

▼1月20日のバイデン大統領の就任式までに、トランプが何か事を起こすのではないかと心配していましたが、まさか現職の大統領が議事堂乱入を扇動するとは思いもしませんでした。任期の最後に現れたのは「偉大なアメリカ」ではなく、「不名誉なアメリカ」でした。民主主義を否定するトランプの本質が噴出したのです。アメリカ国民ではありませんが、またアメリカの民主主義が完全なものだとは思っていませんが、怒りを禁じ得ません。

 

▼日本では、国会が形骸化し、「国権の最高機関」と呼べないような状態になっています。しかし、アメリカでは、連邦議会は大統領と並ぶ政治的権威を持ち続けてきました。ホワイトハウスと同様の、アメリカのデモクラシーの象徴(言わば「政治的聖域」)である議事堂にトランプ支持者が乱入したことは、衝撃的でした。

 

▼今回の暴動は、アメリカの歴史に消すことのできない汚点を残しました。あの崇高な理想を掲げた独立宣言や三権分立を定めた、史上最初の成文憲法である合衆国憲法を踏みにじる、恥ずべき、犯罪行為です。一切の責任はトランプにあります。任期はあと2週間ですが、解任あるいは弾劾に値します。退任後も、法に従って裁かれるべきでしょう。

 

◆【2021/1/8 追記】

 暴徒乱入で中断しながらも、議会では選挙結果の確認が行われ、バイデン大統領の当選が最終的に確定しました。ペンス副大統領も、トランプの圧力に屈することなく、選挙結果の確定という仕事を遂行しました。アメリカのデモクラシーはかろうじて守られた、と言えるでしょう。

 今回の騒乱を受けて、トランプ側近や共和党議員の中に離反の動きが出ていると伝えられています。当然でしょうが、あまりに遅すぎました。共和党は遅まきながら「トランプ党」でなくなっていくでしょうか?

 注目すべきは、今後の福音派の動向です。福音派の良心的な人びとは、今回の出来事に嫌悪感を抱くでしょう。白人労働者層も含めて、ようやく目が覚めていくのではないかと思っているのですが……。

 嘘に嘘を重ね、分断を煽り続けた「トランプの4年間」の影響は、しばらく残るかも知れません。しかし、少なくとも、トランプの4年後の再選はなくなったでしょう。トランプは、自ら墓穴を掘ったのです。

 ただ、自暴自棄になったトランプが1月20日のバイデン大統領就任式までにとんでもないことをする可能性は、まだ残っています。就任式が無事終わるまで、最大の警戒をする必要があると思います。

 

◆【2021/1/9 追記】

 ツイッター社は、暴力を煽る可能性があるとして、トランプのアカウントを永久に停止しました。

 なお、トランプは、12月20日ツイッターで次のように言っていました。

 「1月6日にワシントンで大集会を開く。ぜひ来てほしい。激しいものになるだろう。」