◆山川出版社の『詳説世界史』には、かなり辛口の評価をしてきましたが、宗教改革のページは旧課程の教科書から大幅に刷新され、充実した内容になっています。 ◆私は、「世界史の扉をあけると」でも述べたように、宗教改革期のイコノクラスム(聖像破壊運動)…
◇山川出版社の「詳説世界史」、東京書籍の「世界史探究」、実教出版の「世界史探究」を比較・検討しています。 ◆今回は、中国の道教を取り上げます。「今までの中国史は儒教と仏教に偏っていたのではないか」という反省が、私自身にあるためです。道教の成立…
◆実教出版の「世界史探究」と東京書籍の「世界史探究」の場合、ルネサンスの記述はどちらも旧課程版(世界史B)を踏襲しているようですので、簡単に感想を述べておきたいと思います。 <実教のルネサンスの取り上げ方> ◆必要な事項はほとんど網羅されており…
★山川「詳説世界史」のルネサンスの記述には、改善された部分と大きく後退した部分がありますので、授業では注意が必要です。 ◆改善された部分 ●「ルネサンスの精神」という項で、古代ギリシア文化の発見・再生が明解に述べられています。また、占星術や錬金…
◆インドにおける仏教の消滅を明記しているのは、3冊(山川の「詳説世界史」、東書の「世界史探究」、実教の「世界史探究」)の中では、実教だけです。実教の教科書には、次のように記されています。 「(8世紀~13世紀のラージプート時代)仏教は都市の商…
◆「イスラームをどう取り上げるか」は、今日、ますます重要な課題になっています。今回は、「イスラーム」と記すべき理由を中心に、3社の「世界史探究」教科書を検討します。 ◆まず「イスラーム」について、基本的なことを確認します。 「イスラームとは❝絶…
◆「検討1」で『新約聖書』の言語に関することをやや詳しく述べましたので、今回は簡潔な指摘にとどめたいと思います。 ◆取り上げる教科書は、東京書籍の『世界史探究』と実教出版の『世界史探究』です。 ◆どちらの教科書も、残念なことに、ヒエロニムスがギ…
◆山川出版社の『詳説世界史』は、旧課程版よりは改善されている箇所が多いと思いますが、まだ十分とは言えません。今後さまざまの観点から検討していきたいと思います。(なお、『新世界史』も検討したかったのですが、品切れで手に入りませんでした。予想よ…
◆山川出版社の「歴史総合」教科書の不十分さについては、今まで何度か述べてきました。今回は用語集について述べますが、検討の観点はジェンダーやフェミニズムです。『歴史総合 用語解説』は、山川の教科書3冊をもとに用語を選んでありますので、教科書の…
◆ロシア大統領府は「3日未明、ウクライナの無人機がクレムリンを攻撃した」と発表しました。「大統領の暗殺を狙ったテロ行為だ」とも述べました。ウクライナ側は関与を否定しています。 ◆まだ詳しい報道はありません。事件の真相はやがて明らかになると思い…
◆歴史を学びながら庭でバラを育てていると、バラの歴史や花の美しさについて考えるようになりました。 ◆バラについての本・雑誌・サイトを見ることも多いのですが、気になる表現に出会いましたので、書いておきます。 ◆気になる表現を3つあげます。 ① 新品…
◆昨年度から、高校1年生の必修科目としてスタートした「歴史総合」。昨年から本ブログで指摘してきたことですが[*1]、やはり教え切れなかった(生徒の側からすれば学び切れなかった)学校が多かったようです。 ◆友人(地歴公民科の教員)が、昨年度の2…
◆メキシコ以南の地域をどう呼ぶのが適切なのか、考えてみます。 ◆東京書籍の「詳解歴史総合」には「地域の歴史」というページがあり、6地域についてそれぞれ1ページ分の解説がなされています。「中南米の多様性」と題されたページの最初に、たいへん重要な…
◆ロシアのウクライナ侵攻開始(2022.2.24)から、まもなく1年になります。ロシアのすさまじい攻撃とウクライナの必死の防衛が続き、情勢は混沌としています。戦争終結どころか、停戦や休戦さえ見通せない状態です。両国の死者の合計は、すでに10万人を超え…
▼「歴史総合」だけが注目されている印象がありますが、この4月から、高校2・3年生で選択必修となる新科目「世界史探究」、「日本史探究」、「地理探究」の授業が始まります。これらの科目で「探究的な学び」がどう展開されていくのかは、日本の学校教育の…
◆朝日新聞の最近の読書ページ(毎週土曜日、全3面)はたいへん充実しています。今日も、斎藤美奈子の「旅する文学」から宮田朱己の「気になる雑誌を読んでみた」まで、それぞれの執筆者の批評眼が冴えわたっていました。 ◆斎藤美奈子の連載「旅する文学」は…
◆岩間陽子の『侵攻 飛び交う「歴史の亡霊」』(朝日新聞、2023.1.22付)は、ホロコーストの記憶をめぐって書かれた、説得力ある文章でした(ただ私は、G7に岩間ほど信頼感は持てません)。岩間の文章に関連して、二つのことを述べたいと思います。近代の戦…
◆新型コロナウイルスは、変異を繰り返しながら、感染発生から4年目に入っても猛威をふるっています。この3年間で、世界では700万人もの人がこの世を去っています。 ◆日本でも感染者数・死者数とも急増していて、死者は6万3千人を越えました。しかし、政…
◆浜島書店の資料集「新詳歴史総合」は、世界と日本の近現代史のほぼすべてを網羅していますので、授業では使いやすいのではないかと思います。 ◆ただ、従来の世界史・日本史などの資料の寄せ集めという印象はぬぐえません。誤りに近い部分や不足の部分もあり…
★「大航海時代」以降グローバリゼーションが進む中、ヨーロッパ人は飽くなき好奇心で、世界中の植物を収集しました(17世紀以降世界中に散らばった収集家たちはプラント・ハンターと呼ばれました)。サトウキビやトウモロコシ、ジャガイモなどに代表されるよ…
▼私は柄谷行人の著書の良き読者ではありません。『日本近代文学の起源』はすばらしい本でしたが、『哲学の起源』には幻滅しました。(『哲学の起源』のやや長い書評は「世界史の扉をあけると」に書きました。) ▼『世界史の構造』は読んでいませんが、「交換…
◆帝国書院の「明解歴史総合図説シンフォニア」は、文字や図版が大きく、わかりやすい内容になっています。 ◆しかし、急いで編集したのか、いくつか残念な点がありました。 ①巻頭の「地域の基礎知識」は学習に役立つと思います。ただ、東アジアに中央ユーラシ…
◆第一学習社の「新歴史総合」を、カルチャーセンターの講座のテキストにしようと考えてきました。グージュ以降のフェミニズムの歴史に触れていない教科書や慰安婦を取り上げていない教科書は、テキストの候補から外しました。東京書籍の「新選歴史総合」も考…
◆数年前から、朝日新聞紙上に載る吉田純子の文章を愛読してきました。クラシックの指揮者や演奏家の追悼文、コンサートや音楽コンクールの評などが素晴らしかったからです。吉田は編集委員になり、最近は音楽以外の分野についても書くようになっているようで…
◆高校1年生で履修する新科目「歴史総合」の授業が始まって、半年になろうとしています。私自身は高校の現場を離れていますので詳しくはわかりませんが、各高校では試行錯誤が続いているようです。 ◆従来型の歴史教科書に一番近い山川の「歴史総合」を使用し…
▼今日は、外山義という方のことばが紹介されていました。高齢者施設に関する著書の一節だったようです。 「サービスが提供されても……与えあう関係をふたたび手に入れることができなければ、その人は、花瓶に生けられた切り花である。」 ▼小さな庭で咲いてい…
★朝日新聞の朝刊を手に取ると、自然に鷲田清一の「折々のことば」に目が向いてしまいます。ハッとさせられることばにも、たくさん出会いました。 ★ただ、戸惑いもあります。その理由を、大きく3点述べてみます。 <短いことば・短い論評> さまざまの著作や…
★今回取り上げるのは、第一学習社の「新歴史総合」[歴総711]です。(より詳しい記述の[歴総710]もありますが、未読です。) <すぐれている点をいくつかあげてみます> ◆巻頭で、中学校で学んだ歴史の流れを17世紀まで確認できるようになっている。 ◆時…
■慰安婦は、戦時下における、女性の人権の問題です。東京書籍の2冊の教科書(「詳解歴史総合」[歴総702]、「新選歴史総合」[歴総701])は、正面から取り上げています。 ■「詳解歴史総合」には、次のような記述があります。 ●132ページ(日中戦争) 「戦…
▼今回は、実教出版の「詳述歴史総合」(歴総703)と「歴史総合」(歴総704)を取り上げます。2冊とも、やや先鋭な記述(賛否があると思います)の見られる教科書ですが、「詳述歴史総合」は慰安婦についてまったく触れていません。 ▼「詳述歴史総合」は、「…