世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

▼些細な間違い? 朝日・吉田純子の「ジャポニズム」

 

◆数年前から、朝日新聞紙上に載る吉田純子の文章を愛読してきました。クラシックの指揮者や演奏家の追悼文、コンサートや音楽コンクールの評などが素晴らしかったからです。吉田は編集委員になり、最近は音楽以外の分野についても書くようになっているようです。

 

◆吉田は、今日の「日曜に想う」で、オペラ「蝶々夫人」を取り上げながら、衣装を担当したファッション・デザイナー森英恵を追悼する文章を書いていました。文化の伝わり方にも触れた、森英恵へのオマージュでした。

 

▼しかし、大変残念なことですが、文中に「ジャポニズム」という語が使われていました。正しくは「ジャポニスム」で、フランス語の「ジャポン」(日本)から派生した語です。フランス語( japonisme)の ーisme の発音は「イスム」で、英語のように「イズム」とはなりません。「レアリスム」や「シュルレアリスム」というフランス語と同じです。

 

▼些細な間違いのように見えるかも知れませんが、そうではありません。フランス語の「ジャポニスム」は、美術史はもちろん、高校の歴史教科書でも使われるくらい基本的な歴史用語になっています。その基本的用語を間違ってしまったのです。フランス語と英語をごっちゃにしてしまうとは……。そして、文章の最終チェックをする人も気づかなかったとは。

 

▼言葉というものはとても繊細だということを、あらためて感じました。「ジャポニズム」と使ったため、吉田は文章全体を台無しにしてしまいました。