◆山川出版社の「歴史総合」教科書の不十分さについては、今まで何度か述べてきました。今回は用語集について述べますが、検討の観点はジェンダーやフェミニズムです。『歴史総合 用語解説』は、山川の教科書3冊をもとに用語を選んでありますので、教科書の不十分さについて重ねて書くことになります。
◆いくつかの語・人名で考えます。
◎オランプ・ド・グージュ
●LGBT
◆◎印の語・人名は、他社の教科書には載っているのですが、山川の『用語解説』にはありません。つまり、山川の教科書3冊いずれにも載っていない語・人名です。
◆山川の教科書にジェンダーやフェミニズムの観点がいかに欠落しているかが(近現代史の捉え方がいかに男性中心であるかが)、はっきりわかると思います。驚くべきことに、教科書3冊のうちの1冊『歴史総合 近代から現代へ』(知識中心の旧来型教科書で、受験用と言われています)には、平塚らいてうの名まえさえありません。
◆●印は、山川の『用語解説』に載っている語・人名です。LGBTを取り上げているのは、たいへんいいと思います。しかし、『歴史総合 近代から現代へ』が、ジェンダーやフェミニズムについてはまったく触れずに、末尾のほうでLGBTを取り上げているのは、奇妙と言わざるを得ません。教科書としての一貫性を欠いていると思います。
◆『歴史総合 近代から現代へ』が、平塚らいてうや与謝野晶子には触れず、笠置シヅ子を写真入りで載せているのも(したがって笠置シヅ子は『用語解説』にも載っています)、常軌を逸しています。日本の近現代史において、平塚らいてうや与謝野晶子より笠置シヅ子のほうが重要だとは、誰も考えないでしょう。
◆悲しいことですが、これらが「歴史総合」に表れた「歴史教科書の山川」の実態です。
◆多分山川では、教科書の執筆・編集の段階から、新科目「歴史総合」の趣旨を骨抜きにする作業が始まっていたのです。それを文科省も許容したのでしょう。そして、いわゆる進学校を中心に、山川の『歴史総合 近代から現代へ』が数多く採択されていったのです。気の毒なのは、ジェンダーの視点を欠いた、旧来型の歴史を習う高校生たちです。