世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「歴史総合」教科書の検討8【東書「詳解」のすぐれた点】

 

◆1で述べたように、東書の「詳解歴史総合」(歴史総合702)は、太字の語句・人名をやめたという点で画期的な歴史教科書です。歴史学習が結局は重要語句暗記になってしまうことを避けたかったのだと思います。高度な内容も多いですが、本文や特集ページを「読みながら考える学習」ができる教科書になっています。ただ、教員も生徒も従来の教科書に慣れてしまっていますので、多分採用する学校は少なかったでしょう。

 

◆内容の面で特筆されるのは、台湾についての記述の多さです。朝鮮半島満州に比べて記述が少なくなりがちな台湾ですが、日本による植民地統治の始まりから「ひまわり学生運動」まで、台湾現代史の流れが把握できるようになっています。

 

◆「中南米の多様性」や「太平洋・オセアニアの歴史」は、「世界史探究」への接続という点から重要なだけでなく、「歴史総合」にふさわしい目配りだと思います。これらの地域は、日本との関わりという点でも大切だからです。また、2ページにわたる「大日本帝国内の人の移動」は、非常にすぐれた内容です。

 

◆残念な点(たとえば「日中間の漢字循環」で幕末~明治初期の新漢語創出に触れていないこと、フェミニズムを「女権拡張論」と訳していること、美濃部都政の過大評価など)もありますが、全体としてはすばらしい教科書だと思います。