世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★「歴史総合」教科書の検討6【明治憲法体制の評価】

 

◆「歴史総合」の中で明治憲法大日本帝国憲法)体制をどう評価するかは、たいへん重要だと思っています。日本の近代化の評価に直接関わっているからです。

 

◆山川の「歴史総合」は、「立憲体制の成立」という項目で、大日本帝国憲法制定までの経過やその特徴をかなり詳しく述べています。ただ、イギリスの名誉革命後の体制やアメリカ合衆国憲法の体制の記述[*]に比べて、やや明解さを欠いていると思います。明治憲法体制を「どのような立憲体制と呼ぶべきか」は、はっきりしません。

 

[*]イギリスの名誉革命立憲君主制にきちんと触れているのは、山川の「歴史総合」だけです。アメリカ合衆国憲法の体制についても詳しく述べられていますが、「アメリカ合衆国は共和政を選択した」と明確に述べてあれば、ベストだったと思います(残念ながらそのような教科書はありませんが)。

 

◆山川の「現代の歴史総合」の記述には、揺れが見られました。「立憲国家の成立」という項目で、「強大な天皇大権」(天皇大権は太字)と述べながら、「立憲君主制」という用語(太字ではありません)も使っています。そして、「こうして日本は、憲法と議会によって国民が政治に参加する立憲国家となった」とまとめていますが、誤解を招く表現だと思います。また、教育勅語(太字ではありません)と天皇の神格化(太字です)を、別の項目でつけ加えています。

 

◆東書の「詳解歴史総合」は、19世紀後半の世界的な「立憲制の広まり」の中に大日本帝国憲法を位置づけています。近年の明治憲法体制研究を踏まえた記述だと思います。ミドハト憲法との比較もなされています。ただ、そのために、明治憲法体制そのものについては、やや説明不足になりました。教育勅語についても触れていません。

 

◆実教の「詳述歴史総合」の「立憲国家の成立」という項目は、よくまとまっています。民権派の私擬憲法から入り、初期議会の簡略な説明で終えています。また明治憲法を、「君主権の強い立憲君主制にもとづく立憲国家として日本を規定することとなった」と明確に述べています。教育勅語軍人勅諭もきちんと取り上げています。さらに次ページからは、「議場が語る立憲制」という特集を組んでいました。よく考えられた構成だと思います。