世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

【爆発的感染拡大の中でオリンピックが開催されているという、奇妙で恐ろしい現実】

 

◆新型コロナの爆発的感染拡大が続いています。

 東京都の新規感染者は、7/28・29・30と3日連続で 3,000 人台となりました。まもなく 4,000 人台、 5,000 人台になっていくのではないかと思います。

 全国の新規感染者は、7/29・30と1万人を超えています。2万人を超える日も遠くないかも知れません。重症者も増えていくでしょう。

 

◆このような感染状況の中、政府は、今日緊急事態宣言の拡大に踏み切り、夜7時から菅首相の記者会見がありました。今夜の記者会見も、今までと同様、なかみの薄いものでした。菅首相の記者会見を熱心に聞こうとする人は、ほとんどいないのではないでしょうか。それくらい、政府への信頼は低下しています。(なお、以前から感じてきたのですが、質問する記者がいちいち「よろしくお願いします」と言うのは、奇妙な慣行です。「菅の激怒」がありますので注意しているのでしょうが、「自由で開かれた」言論空間とは思えません。)

 

◆記者会見で菅首相は、高齢者のワクチン接種が進んだことを誇っていましたが(以前「高齢者のワクチン接種を7月で終える」と言っていたもののまだ7割台前半です)、64歳以下の人々の接種率が3%余りであることへの反省は一言もありませんでした。

 

菅首相も西村大臣も「ワクチン接種が切り札」と言っているのですが、国民全体の接種率はまだ 22 %余りにすぎません。2人とも「切り札のワクチン接種が遅れてしまった責任」を感じていないのは、不思議と言うほかありません。全体の接種率が 50 %ぐらいにならなければ、オリンピックは開催するべきではなかったと思います。

 

◆何人かの記者が「オリンピック開催が国民の気持ちにゆるみをもたらしているのではないか」と質問していましたが、菅首相は正面から答えていませんでした。それどころか、「オリンピック期間中に人出は減少している」と強弁するありさまでした。「爆発的感染拡大の責任は自分にはない」と主張したいのでしょう。かつて日本人の美徳とされた「恥」の感覚も忘れてしまったかのようです。

 

◆爆発的感染拡大の中でオリンピックが開催されているという、奇妙な現実。オーウェルの小説のような恐ろしさを感じます。ただ、アスリートたちの「ものがたり」(私も心を動かされますが)が、奇妙さと恐ろしさを覆い隠しています。そういう意味では、政府や組織委員会の狙い通りに進んでいると言えるかも知れません。しかし、「祭の後」は必ずやって来ます。

 

◆政府は「安心・安全な大会」とオウム返しに言ってきましたが、ロイター通信は「陽性が確認されて、出場できなくなった選手が大勢いる。全員が参加できないなんてアンフェアだ」というロシア選手の声を伝えていました。[毎日新聞、7/30付]

 

◆首都圏でこれだけ感染が拡大すれば、母国に戻った後感染がわかる選手・大会関係者・メディア関係者が複数出るのではないでしょうか。政府は「水際対策」のことばかり言っていますが、Tokyo が新たな感染源になり、デルタ株をさらに世界中に拡散させてしまう可能性もあります。それだけ事態は深刻です。

 

◆「危機の8月」がひたひたと近づいてきています。