世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

▼「メダルラッシュの Japan 」と「感染爆発の悲惨な Japan 」

 

新型コロナウイルスによるパンデミックの渦中で開催されたオリンピックが終わろうとしています。「聖なる火」が灯る中で、開催都市 Tokyo・開催国 Japanでは爆発的感染拡大が起きています。

 

▼大会の運営に携わった人たちは大変だったと思いますが、1896年以来のオリンピックの歴史の中で、異例の(異常な)大会だったと言うほかありません。同時に、感染症の歴史の中でも異例の(異常な)事態だったと思います。

 

▼「新型コロナに打ち勝った証」などという言葉が繰り返されていました。しかし、日本で爆発的感染拡大が起きることは、予想されていました。それにもかかわらず、オリンピック開催は強行されたのです。アスリートのために? いいえ。多分 IOC の利益のために。そして、政権の延命のために。

 

▼アスリートの人たちには敬意を抱いています。ただ、世界中で毎日1万人前後の人たちが亡くなる中で、メダル争いが繰り広げられたのでした。「ウイルスに侵食される身体」と「躍動する身体」、「ウイルスによる死」と「栄光のメダル」、その両方をきちんと受けとめようとすると、苦しくなります。今の世界や今の日本の矛盾・混沌が凝縮されたような大会でした。

 

▼「聖火」の「聖」がどういう意味で「聖」なのかを日本人は考えないできましたが、「聖火」は「希望の灯」だったのでしょう。しかし、今回のオリンピックでは、「聖なる火」は疫病の猛威を覆い隠す役割を果たしてしまったかも知れません。「メダルラッシュの Japan」と同時に進行していた、「感染爆発の悲惨な Japan 」……。

 

▼「身体活動の祭」が終わった後、感染状況は、東京・沖縄をはじめ全国でさらに悪化するでしょう。「国民の身体(命と健康)を守る」べき政府に打つ手はあるのでしょうか? 万単位の人たちの身体がウイルスに侵され、入院できない人が激増するでしょう。重症化して死の淵をさまよう人も増え、手のつけられない状況になるかも知れません。

 

▼さまざまの欲望と利害、さまざまの願いと希望、そして疫病と死が入り乱れた「2020東京オリンピック」。危機の中の異常な大会として、歴史にその名を残すことでしょう。パラリンピックもまた、そうなってしまうのでしょうか?