世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

◇『文藝春秋』の特集「代表的日本人100人」に思う

 

◆『文藝春秋』2023年8月号は、「代表的日本人100人」という特集を組んでいます。私としては珍しく、買ってみました。

 

◆識者24人が「代表的日本人」を5人ずつ選んでいます(ある程度恣意的な選び方になるのはやむを得ないのでしょう)。編集部は、識者24人を選んだ段階で、どんな100人になるか、ある程度予想がついたのではないでしょうか。たとえば、片山杜秀佐伯啓思、牧原出、先崎彰容などが選んでいる人々は、従来からの『文藝春秋』の読者層にぴったりだと思います。

 

◆一方、『文藝春秋』とは肌が合いそうにない梯久美子を選者に選んだのは、編集部の良心かも知れません。梯が選んだ5人には、考えさせられました。林芙美子茨木のり子は他の識者も選んでいますが、森崎和江金子文子知里幸恵の3人を梯が選んだことで、特集全体が引き締まったように思います(金子文子まで選ばなくてもという気はしますが)。

 

国谷裕子田中優子石牟礼道子をあげていて、少しホッとしました。功成り名遂げた感じの田中優子に選ばれて、石牟礼道子はあの世で苦笑しているでしょうけれど。

 

◆5人の人物をあげながら、単なる解説ではない、読ませる文章を書くのは、なかなか大変だと思います。ロバートソン、本郷恵子御厨貴坂東眞理子などの文章には、心に響くものがありました。

 

◆もちろん、今回100人に選ばれなかった人たちがたくさんいます。松尾芭蕉葛飾北斎田中正造伊藤博文夏目漱石森鴎外鈴木大拙柳宗悦岡本太郎武満徹などは、選ばれてしかるべきだったと思います。また、ドナルド・キーンをあげる方がいたら、すばらしい特集になったでしょう(どの国で生まれようと、どういう民族であろうと、日本国籍を取得した人は日本人ですから)。

 

◆このような特集の場合は、柔軟な受けとめが大切だと思います。雑誌の100人以外にも有名・無名のすばらしい日本人がたくさんいたことに、むしろ思いをはせるべきなのかも知れません。