世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

【国際比較】日本は看護師も医師も不足![とうとう自衛隊に看護師派遣要請(2020/12/7)]

 ※パンデミックという世界史的な出来事の渦中を私たちは生きていますので、本ブログでも取り上げています。 

 

新型コロナウイルスの感染拡大は、きわめて深刻な状況です。とうとう大阪府と北海道が自衛隊に看護師の派遣を要請する事態に至りました。

 

◆この1週間(11/30~12/6)で、全国の感染者は13,938人増加しました。1日当たり2,000人以上の新規感染が普通になってしまいました。また、この1週間で207人が亡くなりました。1月以来の累積の死者数は2,359人ですが、その1割近くはこの1週間で亡くなったのです。本日(12/7)の死者は39人。また重症者は530人で、過去最多を更新しています。

 

◆政府は「Go To キャンペーンで感染拡大したというエビデンス(証拠)はない」と言い張ってきました。しかし、「Go To キャンペーンによる感染拡大はないというエビデンス(証拠)」を示してはいません。感謝祭で人の移動が増え、アメリカで感染がさらに拡大していることを見てもわかるように、「人の移動が増えれば感染も拡大する」というのは動かしがたい事実だと思います。だから中国は、武漢を完全封鎖し、感染拡大を抑え込んだのでした。(7日、東大などの研究チームが「Go Toトラベル利用者ほど感染リスクが高い」というデータを発表しました。)

 

◆感染拡大を抑えながら宿泊業や旅客業、飲食業を支えようという考え方はわかりますが、「二兎を追うものは…」という状況になっています。政府は、感染が収まらない中で「Go To キャンペーン」を実施したらどのようなリスクが生じるか、実施前にシミュレーションしたのでしょうか? 医療現場のことをどの程度真剣に考えていたのでしょうか? 「ある段階まで感染拡大したらいったん中止する」というような準備もなかったのでしょう。今までの貴重な経験に学ばず、場当たり的に弥縫策を講じるやり方が続いています。

 

◆政府が「Go To 」という強いメッセージを出したため、感染拡大に対する国民の警戒心は緩んでしまいました。そして、医療の逼迫という事態を招いてしまったのです。

 

◆そもそも日本は看護師数も医師数も少ないということを、政府はきちんと認識しているのでしょうか? 調べてみると、100病床当たりの看護師数と医師数は次のようになっていました。(人口1,000人当たりの看護師数・医師数には、医院・クリニックの数字が含まれますので、入院患者のいる病院の医療の実態はわかりません。)

 

  <100病床当たりの看護師数>(2019年、OECD発表)

   日本        86.5人

   フランス     155.3人

   ドイツ      159.2人

   イギリス     306.0人

   アメリカ     394.5人

 

  <100病床当たりの臨床医師数>(2015年、OECD発表)

   日本        17.1人

   フランス      48.7人

   ドイツ       49.0人

   イギリス     100.5人

   アメリカ      85.2人

 

◆日本の病床数の多さや高齢者数の多さも考え合わせなければならないとは思いますが、愕然とするような数字です。日本の病院の医療は、医師・看護師の献身的的な努力でなんとか維持されてきたのです。過酷な勤務、ストレス、給料の安さのため、毎年11%前後の看護師が離職しているというデータもありました。そこに、新型コロナが襲ってきました。このような医療現場の実態があるため、欧米に比べて圧倒的に少ない感染者数であるにもかかわらず、医療の逼迫という事態になっているのです。(なお、自衛隊の看護官は約1,000人とのことです。それほど多くはありません。)

 

菅首相は国会でも記者会見でも「国民の命と健康を守る」と語っています。しかし、官僚の書いた原稿の棒読みですので、真剣さや誠実さが感じられません。子どもたちが楽しくクリスマスを迎えられるよう、また日本に住む人すべてが明るい気持ちで新年を迎えられるよう、早く政策を転換し、感染拡大を食い止めてほしいと思います。2週間に限って、「緊急事態宣言」か、それに近いものを出すべき時ではないでしょうか? 今手を打たなければ、深刻な状況で新年を迎えることになってしまうような気がします。