世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

<新型コロナ・データ(4月中旬)>愕然 都道府県別病床数[付 ICU病床数・医師数国際比較」

 

☆メディアにはいろいろなデータが溢れていますので、なかなか把握が困難です。また、まもなく忘れ去られていきますので、重要なデータを一応本ブログでも記録しておきます。日本が医療体制の充実を図ってこなかった歴史が現れているデータです。

 

新型コロナウイルス感染者向けに確保している病床数を、共同通信が調査し、都道府県別に集計しました(4月17日)。このような調査報道は、非常に貴重なものです。結果には驚きました。新型コロナウイルス感染が拡大・蔓延すれば、日本の医療は本当に崩壊してしまうかも知れません。都市部は都市部での困難がありますし、地方では地方の困難があります。

 

◆調査によれば、全国の確保病床数計は1万501ですが、入院患者は6,249人に達しています。すでに東京都・大阪府兵庫県で、感染者数が確保病床数を上回っています。

 

◆確保病床数が50未満の県もありました。確保病床数100未満で数えると、計17県になりました。全都道府県の36%にあたります。東北、四国、九州・沖縄に多いのがわかります。高齢化率が高い地方では重症者の割合が高くなりますから、きわめて心配です。

 <確保病床数が50未満の県>

   青森、岩手、滋賀、山口、香川、高知

 <確保病床数が50~99の県>

   秋田、宮城、山梨、静岡、奈良、和歌山、愛媛、佐賀、宮崎、鹿児島、沖縄

 

◆詳しくは共同通信のサイトで見ていただきたいと思いますが(東京新聞中日新聞河北新報などでは4月19日付で報じていました)、このデータに、都道府県別のICU数、人工呼吸器数、医師数などのデータを加えれば、日本の医療の貧困・地域による格差がさらに浮き彫りになると思います。(医師数の国際比較もご覧ください。)

 

◆現在、すでに病院内感染が多発しています。残念ながら、これが日本の医療の現実です。院内感染の多発も、保健・医療体制の脆弱化と関係があると思います。たとえば、政府は、公衆衛生の最前線である保健所の数を減らしてきました。1990年代半ばと比べると、保健所の数は6割に減少しているのです。常勤職員数も減っています。感染症対策に消極的だったことの表れです。国立感染症研究所もどんな役割を果たしてきたのでしょうか? 今回、厚生労働省は、PCR検査抑制の役割を、人手も少ない保健所に押し付けたのでした。

 

◆以上のような脆弱な体制であるにもかかわらず、日本には思い上がった人たちもいました。たとえば、1月下旬、武漢の突貫工事による病院建設が行われていて、私も心配してTVの映像を見ていました。ところが、この病院建設を嗤った人がいたのです。朝日新聞本社の記者でした。また、2月に「日本の医療は進んでいるので大丈夫」とTVで語っていた複数の「専門家」がいました。新型コロナウイルスは、日本の脆弱な保健・医療体制と日本人の思い上がりを、同時に痛撃しています。

 

◆調査後に確保病床数を増やした都道府県もあるかも知れません。今後各都道府県で、確保病床数、ICU数、人工呼吸器数などが増加していくことを期待しています。医療用マスク・手袋・ゴーグル・防護服なども、急いで供給してほしいと思います。

 

◆ただ、エクモ(体外式人工肺装置)を扱える専門医は、全国で60人しかいないそうですが[ newsweekjapan ]、本当なのでしょうか? 今となっては、養成する時間もないでしょう……。

 

◆一方、高齢者の重症化が言われている中で、高齢者施設も、デイサービスや訪問介護が受けられなくなった家庭も、たいへんな苦労をしていると報じられています。(「クローズアップ現代+」NHKTV、4月23日)【4月24日追記】

 

◆政府・厚生労働省には、深く反省し全力で取り組んでもらう以外ありません。

 

 

【ICU病床数国際比較(人口10万人あたり)】

 *日本のあまりの少なさに驚きます。

 *日本を上回っている、イタリア・スペイン・フランスでは、医療崩壊が起きていると言っていい状況です。

  アメリカ    34.7

  ドイツ     29.2

  イタリア    12.5

  フランス    11.6

  韓国      10.6

  スペイン     9.7

  日本       7.3

 [ Statista.com の2020年3月の論文より。調査年は2009年、2012年、2017年が混じっています。日本と韓国は2017年の数値。<2020.4.23追記>]

 

 【医師数国際比較(人口千人あたり)】

 *最新の分かりやすいデータが見つかりませんでしたが、諸外国に比べ医師数は多くないということはわかりました。特に先進国(OECD加盟国)の中では、下位のほうです。

 

 ◆2013年のデータ[ニッセイ基礎研究所

  ドイツ    4.1人

  スウェーデン 4.0人

  スイス    4.0人

  フランス   3.1人

  イギリス   2.8人

  アメリカ   2.6人

  日本     2.4人

  *2018年には、日本は2.59人に増えているようです。[ GemMed ]

 

 ◆2017年の別のデータ[ labcoat.jp ]

  ・OECD加盟35か国中30位

  ・世界193か国中61位