世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★米大統領選の最終結果を気にしながら、投票のしくみをあれこれ考えました

 

◆日常的に非難や中傷が溢れるネット社会。そういうネット社会を最大限に利用した政治を、トランプは4年間行ってきたのだと思います。その延長上に、今回の大統領選挙もありました。

 

◆そう考えると、トランプが獲得した7100万票を、単純に「すごい」とは言えないような気がします。トランプの扇動にもかかわらず、「バイデンの積極的な支持者たち」+「トランプでは困ると考えた人たち」がトランプ支持を上回ったということのほうが重要だと思います。

 

◆ただ、トランプの熱狂的支持者のエネルギーは、今後どこに向かうのでしょう? 敗北を認めたとしても(今日現在敗北を認めていませんが)、トランプは、今後もネット社会を利用して、<バイデン/ハリス>の政治を攪乱し続けようとしているのかも知れません。右派メディアを新たに立ち上げるという噂もあるそうです。武装グループの動きも懸念されます。アメリカにはリンカンやケネディの暗殺という歴史もあることが、頭をかすめます。

 

☆今回の大統領選挙からも、ネット社会では「AかBか」という議論が過熱しやすく、デマが人びとの感情を揺さぶり、世論が分断されやすいことがわかります。日本では、今後、憲法改正をめぐる国民投票が行われる可能性もあります。その場合、はたして、理性的で冷静な判断ができる状況をつくれるでしょうか? イギリスのEU離脱国民投票のことも思い出されます。住民投票国民投票は、住民・国民の政治への直接参加という点で重要な制度ですが、ネット上の議論の一定の規制も含めて、理性的で冷静な判断ができる環境づくりがきわめて重要だと思います。

 

☆二大政党制に基づく大統領選挙(しかも各州の選挙人総どり制)というしくみについても、考えさせられました。複数の政党から複数の候補者が立候補できる、フランスのようなしくみのほうがベターなように思いました。二大政党制に基づく大統領選挙では、民意をすくい取れない時代なのではないでしょうか? もちろん決選投票が行われれば、最後は「AかBか」になりますが。

 

アメリカの上下両院の選挙も気になってきました。よく考えられた選挙制度だと思いますが、やはり二大政党制が土台となっているのでしょう。上院は、1月のジョージア州の決選投票を待たないと、最終結果が出ないようです。ただ、注目すべきことがありました。共和党の下院当選者にも、女性やマイノリティが増えたことです。民主党共和党の橋渡しの役割を果たしてくれればいいのですが。

 

◆議会議員の選挙制度については、日本でも(衆議院参議院とも選挙区制と比例代表制を組み合わせています)、検討する余地があると思います。国民の政治的意見も、政治的争点も多様化していますが、それらを十分に反映できるしくみにはなっていないような気がしています。

 

◆改善案はあまり出ていませんが、「1人1票制」を止めて「ポイント制」にするという案には注目してきました。「有権者1人が複数ポイントを持って投票する」という制度です。この制度では、次のようなことが可能になります。

 

 <有権者1人が3ポイント持っていて、選挙区に立候補者が3人いる場合>

 ・与党の候補者Aに2ポイント投票し、野党候補者Bにも1ポイント投票する。

 

◆「支持政党の候補者だからAに1ポイントは入れるけど、Cの農業政策に賛成だから2ポイント入れてみよう」などということもできます。また、「どの候補者がいいか判断できない」という場合は、候補者A~Cに1ポイントずつ投票するというようなことも可能になります。もちろん、候補者Aに3ポイントという場合もあるでしょう。

 

◆このような制度では、多様な民意をすくい上げることができると思いますし、ネット社会特有の二極化も避けられるでしょう。小選挙区制の弊害と言われる「死票の多さ」は緩和されます。より政策が重視されるようになりますから、候補者名を連呼するような選挙運動も改善されるでしょう。有権者の関心は高まり、投票率も上がると思います。

 

◆「有権者1人複数ポイント制」は、「二大政党制が理想」という考え方とはまったく違います。過半数議席を獲得する政党がないという場合も多くなるかも知れません。連立内閣が続き、政治が不安定になるという可能性も否定できません。ただ、国会議員の、ほんとうの意味での討論の力や政策調整の力は、高まるのではないでしょうか。

 

★最悪なのは、「民主政治の形骸化」という事態です。アメリカと日本では歴史も政治制度も違いますが、民主政治のより良いしくみが強く求められているという点では、共通していると思います。