世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★<バイデン/ハリス>の勝利のスピーチを聞いて思いました

 

◆私たちは、いま、2020年アメリカ大統領選挙という歴史の1ページを見ています。

 

 ◆ようやく<バイデン/ハリス>のヴィクトリー・スピーチがなされました。バイデンがとても尊敬すべき人物であること、それがよくわかりました。

 

★スピーチの中で、バイデンは「分断ではなく結束を求める大統領になることを誓う」と述べていました。ほとんど同じ内容のスピーチを、リンカンが行っていたことを思い出しました。南北戦争が勃発する3年前(1858)のことです。

 

 ●『「分裂した家は、建ち続けることができません」。私は、この政府が、半分は奴隷州、半分は自由州という状態で永久に続くはずなどない、と考えます。連邦の解体は望みません。家の倒壊も望みません。私が望むのは、家の分裂状態を止めることです。』【*1】

 

【*1】上岡伸雄編著『名演説で学ぶアメリカの歴史』(研究社、2006)

 ※なお、「分裂した家は、建ち続けることができません」は、『マルコによる福音書』第3章からの引用です。

 

★トランプは「連邦最高裁まで争う」と言っていますが、通常のかたちで政権移譲するよう、共和党の良識ある人びとが彼を説得してほしいものです。たとえ連邦最高裁で争ったとしても、判事たちは(保守派優勢と言われているものの)、任命されたばかりのバレットを含めて、法に基づいた適切な判断をするだろうと思います。アメリカ合衆国憲法は、歴史上初めて三権分立を定めた憲法なのですから。合衆国憲法制定(1787)の約40年前に、フランスの思想家モンテスキューは、次のように述べていました。

 

 ●「もしも、同一の人間、または、貴族もしくは人民の権力者の同一の団体が、これら三つの権力、すなわち、法律を作る権力、公的な決定を執行する権力、犯罪や私人間の紛争を裁判する権力を行使するならば、すべては失われるであろう。」【*2】

 

【*2】モンテスキュー『法の精神』(押村高ほか訳、『西洋政治思想資料集』[法政大学出版局、2014]所収)

 

★史上初めて黒人女性副大統領となるハリスは、スピーチの中で、女性参政権運動と女性参政権の実現に触れていました。奇しくも今年は、合衆国の女性参政権憲法修正で実現してから、ちょうど100年にあたっています。

 

 ◆大統領選挙が最終的にどのようなかたちで決着するのかわかりません。万が一、連邦最高裁が選挙結果を覆すようなことがあれば、アメリカの民主主義は瀕死の状態に陥ってしまうでしょう。ハリスが言っていたように、民主主義とはつくり続けるものだということを強く感じています。