世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

▼独ソ戦のような惨状【ロシア軍のウクライナ侵攻】

 

●ロシア軍のウクライナ侵攻から50日が経ちました。ロシア軍の攻撃はすさまじいものです。多数の都市、町、村を破壊し、多数のウクライナ市民を虐殺しています。

 

ウクライナ東部の激しい戦闘は、今後どうなるでしょうか? アメリカやヨーロッパ諸国が供与した軍事物資は東部に届いているのでしょうか? ウクライナ軍はマリウポリハルキウを守り切れるでしょうか? 

 

●ロシア黒海艦隊の旗艦「モスクワ」がウクライナ軍のミサイル攻撃によって沈没した、というニュースが飛び込んできました。この事実をロシアは隠すことはできません。ロシア国民も、戦況の一端を知ることになるでしょう。

 

ウクライナの惨状は、第二次世界大戦中の独ソ戦を思い起こさせます。独ソ戦では、ソ連側の死者が2千数百万人(その半数は市民でした)に、ナチス・ドイツ側の死者は1千万人近く(その半数が市民)に上りました。プーチンは「ネオナチとの戦い」などと言って独ソ戦と現在の戦争を重ね合わせていますが、独ソ戦の時のソ連と現在のロシアでは、立ち位置がまったく違います。

 

●[独ソ戦の時のソ連、ドイツ]と【現在のロシア、ウクライナ】を大ざっぱに比較してみます。

 

 1[独ソ戦]ドイツ軍が一方的にソ連領内に侵攻した。

  【現状】ロシア軍が一方的にウクライナ領内に侵攻した。

 

 2[独ソ戦]ドイツ軍は首都モスクワに迫ったが、制圧できなかった。

  【現状】ロシア軍は首都キーウに迫ったが、制圧できなかった。

 

 3[独ソ戦アメリカ、イギリスなどが兵器をソ連に援助した。

  【現状】アメリカ、ヨーロッパ諸国が兵器をウクライナに援助している。

 

 歴史の皮肉でしょうか、ロシアは独ソ戦の時のドイツと同じような立場になっています。「ネオナチ」とは、プーチンやその側近たち、軍幹部、ロシア正教会の指導者たちのことにほかなりません。

 

 4[独ソ戦ソ連軍はスターリングラードを死闘の末守り抜き、攻勢に転じた。

  【今後】ウクライナ軍はマリウポリハルキウを必死に守り抜き(あるいは奪い返し)、攻勢に転じる。

 

 5[独ソ戦ソ連軍は多大な犠牲を払いながら、ドイツ軍を押し戻し、とうとうベルリンを陥落させた。

  【今後】ウクライナ軍は多大な犠牲を払いながら、ロシア軍をロシア領内に押し戻し、ウクライナの独立を守り抜く。

 

 4・5の【今後】は、私の期待に過ぎないかも知れませんが……。

 

●ゼレンスキー大統領やウクライナ軍、ウクライナ国民は、多分、独ソ戦の時のソ連軍の戦いやユーゴスラヴィアパルチザンの戦いから、たくさん学んでいると思います。加えて、現代における情報戦の重要性を認識しながら、さまざまな取り組みを展開しています。

 

●一方、「ロシア世界の拡大」という妄想にとりつかれているプーチンやロシア軍幹部は、クリミアやシリアの「成功」体験にしがみつき、歴史に学んでいないと思われます。国内では情報統制を強力に進めれば支持されると考えているようですが、ロシア軍の戦死者の増加(特に多くの若者たちの死)という現実は隠すことができません。ロシア国民もしだいに目を開いていくと思います。「兄弟国ウクライナ」におけるロシア軍の破壊と殺戮の事実も、ロシア国民は少しずつ知っていくことになるのではないでしょうか。