世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

▼プーチンのメンツを保つ停戦?【ロシアのウクライナ侵略】

 

▼膨大な数の人びとの人生を破壊し続けるプーチン

 

ウクライナから国外に脱出した人は、300数十万人に上っています。また、ウクライナ国内では、ロシア軍の無差別攻撃のため、子どもを含むたくさんの市民が亡くなったり負傷したりしています。瓦礫の山と化した都市もあります。ウクライナ軍の戦死者・負傷者もかなりの数になっていると思われます。

 

▼一方、ロシア軍も大きな損害を被っているようです。戦死者7千人以上、負傷者1万4千人~2万1千人と報じられています[*1]。ロシア軍の力を過信し、ウクライナ軍の力を侮っていたプーチンは、いま歯ぎしりしていると思います。シリアで集めた傭兵の投入は、戦況を好転させるのでしょうか? 中国は、プーチンの要請を受けて、ひそかに軍事支援を行うつもりでしょうか?

 

▼これ以上犠牲者を出さないためには、互いに譲り合って停戦するしかありません。戦闘続行の道を選べば、戦争は長期化・泥沼化する可能性があります。長期化・泥沼化すれば、ウクライナは荒廃してしまいます。同時にロシアもまた、政治的・経済的に混乱し、衰退してしまうでしょう。

 

▼今後の情勢を考えるうえで、ジョン・シンプソンの文章「プーチン大統領、今後はメンツを保つ方法を探る」[*2]は、参考になりました。特に、第二次世界大戦中のソ連フィンランド戦争を例に挙げながら論じていて、説得力がありました。シンプソンは、フィンランドウクライナを重ねて考えているのでした。

 

第二次世界大戦中、ソ連フィンランドを侵略しましたが、フィンランド軍は果敢に大国の軍隊と戦いました。スターリンは、予想を上回る抵抗に出会ったのです。最終的には、フィンランドは、カレリア地方の一部の割譲を余儀なくされましたが、しっかりと独立を守りました。

 

▼シンプソンの文章から考えられる妥協点には、ウクライナが「クリミア半島におけるロシアの主権を認める」ことが含まれるでしょう。「ウクライナNATOに加盟しない」ことも含まれるでしょう。「これらが取り決められれば停戦し、プーチンは、ロシア軍の大損害を覆い隠しながら、”勝利した”と国内向けに宣伝できるだろう」というわけです。しかしウクライナは、市民の犠牲をこれ以上増やさないためとはいえ、「クリミア半島におけるロシアの主権を認める」ところまで踏み切れるでしょうか? 

 

ウクライナ側は、停戦になっても、長期の徹底抗戦になっても、独立を守り抜く覚悟です。まもなく、NATOとは別個に(しかしアメリカやEUの協力を得ながら)、自国の安全保障の枠組みを新たにつくる準備に入ると思います[*3]。

 

[*1]読売新聞電子版(3/18)

[*2]BBCニュース日本語版(3/15)

[*3]もしかしたら(私見に過ぎませんが)、「東欧機構」のような枠組みが考えられるかも知れません。その意味では、ポーランドチェコスロヴェニアの首相が戦時下のキエフを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談したことは、非常に重要な動きだったと思います。