世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

【ジェンダー・日本社会・スポーツ】▼困惑しながら10人は思った…[森喜朗発言➡橋本聖子]

 

◆Aさん(男性)

 「マスコミが騒ぎ過ぎだよ。去年、うちの町内会の会長も言ってた。役員に女が増えて、役員会が長くなったって。ま、町内会レベルの意識がずっと政界のトップのほうまでつながってるってことかな。しょうがないよ、それが日本だもの。」

 

◆Bさん(女性)

 「マスコミが騒いでくれてよかった。マスコミが取り上げなかったら、日本社会がかかえている問題が浮き彫りにならなかったと思うの。今回は、ジェンダーのこと、考えさせられた。私自身も子育ての時、女の子らしくとか男の子なんだからなんて言ってきたので、反省してます。橋本聖子さんのことはよくわからないけど、日本にもニュージーランドの首相のような方が出てくれないかしら。」

 

◆Cさん(男性)

 「森は、日本男児の風上にもおけない奴だ。ほんとうの日本男児は、あんな差別発言はしない。記者会見でも、いつまでもぐだぐだ言ってたしな。これっぽっちも潔さがない。女々しいぞ、森。菅も二階も含めて、今の日本の政治家に、志士はいないな。金や権力を手にしたい奴らばっかり。志が低いから、ああいうことを言うんだ。ジェンダーとかなんとかどうでもいいが、オレたちほんとの保守派はな、大和なでしこが言うことを尊重してるよ。」

 

◆Dさん(女性)

 「オリンピックにあんまり関心ないからさ、知らなかった、森っていう人がまだやってたなんて。ああいう男とは闘わないとダメ。ああいう男はどこにでもいるからね。50年前もひどかったのよ。全共闘の連中はまだよかったけど、新左翼セクトなんてひどかったらしいわ。革命叫んで、内ゲバやって、男尊女卑じゃ、話になんないでしょ。だから、そのあと、ウーマン・リブが起きたの。今の人に言ってもわかんないだろうけど、これも大事な歴史なのよ。なかなか変わんないけどね。だからさ、こんな年になっても、まだ闘ってるの。橋本聖子? 選手の頃は輝きがあったけど、今は政治家の顔になってきちゃった。小池も丸川も、顔つきがね。」

 

◆Eさん(男性)

 「森喜朗という人は、旧い日本社会の代表みたいなものでした。結局、森に可愛がられてきた橋本聖子が跡を継いで、旧い日本社会は続いていくんでしょうね。頑張ってもらうしか、しかたがないのですけれど、なんかダークな感じ。みんな遠慮して言わないようですが、橋本のセクハラ・パワハラのほうが、森の発言より悪質だったと思います。あの時、ほんとうは政界・スポーツ界を去るべきだったでしょう、橋本聖子は。」

 

◆Fさん(女性)

 「橋本聖子さんはしっかりやってくれると思う。過去のこといろいろ言っても始まらないし。完璧な人っていないんだから。大切なのは、今でしょ。みんなで盛り立てて、オリンピック・パラリンピックを成功させなくちゃなんないでしょ。あらさがしして文句ばっかり言うのはやめようよ。」

 

◆Gさん(男性)

 「輸入したワクチンの接種開始と新会長選出が重なったが、停滞と混乱という、今の日本を象徴していたと思う。コロナ対策の切り札などと言っているが、日本はワクチンを自前で開発・生産できない国になってしまったという現実……。多分ワクチン供給は遅れに遅れて、高齢者の接種さえいつ終わるかわからないだろう。そういう国が、国力を無視して、国際的なスポーツ・イベントを開こうとしている。しかも、男女格差が大きい社会のまま。復興五輪などとも言っているが、福島の原発廃炉作業は進まないままだ。児童虐待は増えているし、一人親世帯はコロナ禍で困窮している。矛盾のかたまりのようだ、今の日本は。女性の自殺者が増えている中で、能天気な森発言がなされたことを、忘れてはいけない。橋本聖子会長という弥縫策では解決できないほど、日本社会の病は重いと思う。コロナと酷暑の中でオリンピック・パラリンピックを強行開催したとしても(失敗があっても成功したと宣伝するだろう)、その後の日本は、財政的問題も含めて、矛盾が深まらざるを得ないと思う。令和という美しい元号のもとで、多分、停滞と混乱が続いていく。」

 

◆Hさん(女性)

 「一言だけ。この間友だちとも話したんだけど、森さんの発言は、すごく根深いと思う。天皇制の問題にもつながっているのよ。ああいう男たちがたくさんいて大きな顔してるから、女性天皇が実現しないんだってことが、今回わかったわ。愛子さま天皇になる可能性がでてきたら、ようやくジェンダー平等でしょ。」

 

◆Iさん(女性)

 「アスリートだった橋本さんが会長になったことは、一歩前進だと思います。でも、形だけの不透明な候補者検討委員会を作って決めるやり方は、従来の政治手法そのものでした。いま、池江さんや大坂さんが頑張っています。その姿を見ると、涙が出るくらいです。橋本さんも、選手時代の気持ちを思い出しながら、仕事を全うしてほしいと思います。世界が見ていますので。」

 

◆Jさん(女性)

 「今回の出来事を見ていて、なにか恐ろしさのようなものを感じました。スポーツの祭典が深く政治と結びついていることが、図らずも明らかになったからです。オリンピック・パラリンピックは、純粋なスポーツの祭典ではなく、もはやスポーツ政治・スポーツ経済といったものに深くからめとられているのです。スポーツ政治・スポーツ経済の利害と無縁ではないということです。ヨーロッパでは、最近スポーツ・インテグリティということが言われているようです。インテグリティは、高潔さ・健全さという意味です。インテグリティという語が必要なほど、スポーツは闇を抱えてしまったということでしょう。いくら考えても、高潔さや健全さと森喜朗という人とは結びつきませんでした。」