世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

アメリカ大統領選挙:民主主義の崩壊過程を見ているのでしょうか? それとも…

 

◆次のようなことから、「アメリカの民主主義の崩壊過程を見てるんだな」と思ったりしてきました。

 ① 前時代的な「州ごとの選挙人総どり方式」を改めようとしない。

 ② トランプのでたらめな演説に、支持者が熱狂している。

 ③ 第1回TV討論が討論になっていなかった。

 ④ 投票箱や投票用紙でトラブルが起きている。

 ⑤ トランプ陣営は投票率を下げるよう画策している。

 ⑥ 銃が売れ、武装グループが活動を活発化させている。

 

◆①の選挙制度は、「わが州は〇〇候補を推す」という建国以来の習慣です。各州の意見を尊重した制度ですが、現在は民意を反映しない仕組みと化しています。前回の大統領選挙で見られたように、総得票数と一致しない事態が生じているのです。②は、滑稽と言うか、悲しい光景です。トランプに「アメリカン・ドリーム」を託す人たちがまだまだいるのです。

  

 ◆一方では、「アメリカ民主主義の苦しい再生過程を見ているのかも知れない」とも思うようになりました。TVではトランプ支持者の熱狂ぶりが流されていますが、次のようなこともあるからです。

 ⑦ 大統領選挙と同時に行われる連邦議会選挙では、上下両院とも民主党過半数となる可能性が高い。

 ⑧ 白人女性がトランプ支持から離れているらしい。

 ⑨ 白人男性中高年層のトランプ支持も4年前ほどではない。

 ⑩ 若者たちの過半数はトランプを支持していない。

 ⑪ 福音派など共和党支持者に、わずかながら亀裂が見られる。

 

◆⑪に関連しては、カトリックの動向も気になっています。ただ、これらは、分断がさらに深まることの指標にもなるでしょう。大統領選挙の底流は、なかなか私たちには見えてきません。⑥には内戦の兆候すら感じられるのですが、南北戦争(1861~65)以来と言われる、国民の分断を乗り越えるには、少なくとも数年はかかるのかも知れません。

 

◆もしバイデン(実質的にはバイデン・ハリス体制だと思います)が辛勝した場合、トランプは「郵便投票で不正があった」と主張して、大統領職への居座りを図るでしょう。裁判にも訴えるでしょう。トランプは、「アメリカの民主主義」が世界中の笑いものになっても(とりわけ中国が嘲笑しても)、次々と混乱を引き起こすに違いありません。最悪の場合、新型コロナ感染が収まらない中、12月から1月にかけても大混乱が続き、1月20日の大統領就任式が行えない事態さえ想定されます。

 

◆そのような大混乱が起きても、アメリカの民主主義は何とか再生していくのではないか、最近はそう思っています。たとえ泥沼の4年間が続くとしても、明るく次のように言うアメリカ人たちがたくさんいるように思うのです。

 「崩壊? 崩壊しても再生させるよ!」