世界史の扉をあけると2

<世界史の扉をあけると>の続編です

★アメリカのデモクラシーの衰弱【追記:トランプ感染】

 

<テレビ討論の無残>

 

◆日本時間の本日(2020.9.30)、大統領候補2人の第1回テレビ討論が行われました。討論の最初からトランプがバイデンの話を遮り、司会者の注意にもかかわらず、それがずっと繰り返されました。世界中の人々がトランプの言動に慣れてしまったかも知れませんが、醜態というほかありません。このような人がアメリカの大統領であるという現実に、あらためて驚きます。バイデンもいま一つ力強さに欠け、アメリカのデモクラシーの衰弱を表したようなテレビ討論でした。でも、トランプ支持者の多くは、あのようなトランプの振舞いに喝采をおくるのでしょう。まるでショーを楽しむかのように。今やアメリカという国のレベルはあの程度だ、ということなのでしょうか?

 

◆10月7日に行われる、副大統領候補同士のテレビ討論に期待したいと思います。「史上初の黒人女性副大統領候補」ハリスは、存在感を示せるでしょうか?

 

<制度疲労①>

 

有権者が大統領を選ぶというしくみは、与党内の派閥領袖の意向で首相が決まってしまう日本(高齢社会にふさわしい「老害」でしょうか)よりは、ましなのでしょう。ただ、各州の選挙人の総どり方式は、正しく民意を反映するでしょうか? 4年前には、総得票数では上回ったクリントン候補が敗れたのでした。アメリカのデモクラシーの制度疲労でしょう。選挙制度改善の動きがないのは、不思議なことです。

 

<制度疲労②>

 

◆トランプによる最高裁判事の指名が話題になっています。最高裁判事の任期が終身であることは、合衆国憲法第3条に定められているようですが、終身でいいのかという議論はないようです。ここでも、制度疲労が気づかれていません。憲法制定(1787年)当時なら、平均寿命が短かったでしょうから終身制でもよかったと思います。しかし平均寿命は伸び、40代で判事になれば40年ぐらいはその地位にあることになります。最高裁判事の終身制がアメリカのデモクラシーにとってはたしていいことなのか、議論がないのは不思議なことです。定年制や10年任期制など、いろいろなしくみが考えられるはずです。(日本でも、今後は、最高裁裁判官の国会承認を考えるべきでしょう。そのような憲法改正をこそ、行うべきです。)

 

<政治ショーと化した大統領選挙>

 

◆トランプは、選挙に敗れた場合に備えて、郵便による投票の不正を言い立てています。法廷闘争に持ち込みながら、大統領に居座るつもりなのでしょう。そのような混乱・泥沼化が起きれば、アメリカのデモクラシーの決定的な衰弱ぶりを世界中にさらすことになりまます。しかし、世界の強権的な指導者たちは、むしろ喜ぶでしょう。「民主主義など愚の骨頂だ」とひそかに思っていますから。「中国のような独裁政権のほうがましなのだ」というような考えが、さらに世界各国に広まる可能性さえあります。

 

アメリカ大統領選挙は、デモクラティックなしくみというよりは、大規模な政治ショーとなってしまいました。新型コロナ対策に失敗し、人種差別が根強く残り、地球温暖化に目を向けず、大統領選挙に無駄な費用と労力をかける「偉大な国アメリカ」。国際的に見ても、「パックス・アメリカーナ」は、実質的には終わっていると思います。

 

【トランプ感染(2020.10.3追記)】

 トランプ大統領新型コロナウイルスに感染しました。「やっぱり」という感じです。アメリカの人々には同情を禁じ得ませんが、マスク着用を軽視し、「消毒薬を注射すればいい」などという迷言を吐いていた報いというほかありません。

 1か月後の大統領選挙にはどのような影響があるでしょうか? 医療スタッフは重症化しないよう全力で治療に当たると思いますので、早ければ12日ぐらいで回復するかも知れません。その場合は、ブラジルやベラルーシの大統領のように、いい宣伝材料になるでしょう。逆に重症化すれば大変なことになりますが、トランプ支持者はかえって頑なになり、アメリカ国内の分断は一層深まるかも知れません。

 世界中が驚いていると思いますし、各国首脳はお見舞いの言葉を述べています。しかし、多分、中国政府は「危機管理のできない愚かな大統領」と嘲笑していることでしょう。

 政府関係者が何人も感染し、ホワイトハウスクラスターの様相を呈しています。「世界で最多の感染者と死者を出し、大統領自身も感染したアメリカ」の病状は深刻だと思います。